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コラム

組織サーベイを上手く活用し、成果につなげるには

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組織サーベイを上手く活用するヒント

組織サーベイを導入し、従業員の状態を測定する企業が増えています。組織サーベイで社内の現状が見えたら、より良い状態にすべく社内に働きかけることになります。

ところが、組織サーベイを実施したのは良いが、改善のために動けずにいる。そうした企業は少なくありません。どうすれば、組織サーベイの結果を有効な結果につなげられるのでしょう。

組織サーベイの活用には多様なアプローチが求められますが、このコラムでは一つの視点を提供できればと思います。具体的には「自己効力感」という考え方をもとに、成果を導く組織サーベイの活かし方について解説します。

従業員の行動変容を促す自己効力感

社内の現状に課題があり、その課題を解決したい。そのような際、従業員の行動を変容させなければならない場合が多いものです。

これまで通りの行動では問題があるため、行動を改める必要があるということです。とはいえ、すぐに想像できるように、行動変容は容易ではありません。

学術研究の世界では、何が行動変容を促すのかを探究してきました。結果的に、行動変容の主要な要因として「自己効力感」というものがあることが分かりました。自己効力感を高めれば行動を変えやすくなります。

自己効力感とは何でしょう。人がある行動をとろうとするときには、①その行動を上手くとれる自信、及び、②行動の結果がどうなるか分かる自信、という2つの自信を持ち得ます。

このうち前者、すなわち、ある行動を上手くとれる自信のことを自己効力感と呼びます(※1)。自己効力感が行動変容をもたらすとは、その行動を上手くとれると思うから人は行動を変える、ということです。

自己効力感を高めることの意義

自己効力感は様々な領域で良い結果をもたらすことが示されています(※2)。そのうち、主に仕事に関連する領域における自己効力感の効果を紹介しましょう。

例えば、入社前に仕事に対する自己効力感が高いほど、入社後の仕事のパフォーマンスも高い、との研究があります(※3)。この仕事は上手くやれそうだと思うと、実際に行動をとることができ、成果にもつながるのです。

他にも、創造的自己効力感が高いほど創造性が高いという結果も提出されています(※4)。創造的に振る舞える自信を持つと、実際に創造的なアウトプットができるということです。

このように自己効力感は、人の行動に密接に関わっています。組織サーベイの結果を踏まえ、従業員の行動変容を狙う際には「行動を変えよ」と言うより、「その行動をとれる自信」を高める方が有効なのです。

自己効力感を高める方法とその具体例

では、自己効力感を高めるにはどうすれば良いのでしょうか。次の4つの情報源が効果的です(※1)。

  • 遂行行動の達成  : 成功体験を得る
  • 代理的経験    : 他の人が取り組む姿を見る
  • 言語的説得    : 他の人から励ましてもらう
  • 情動喚起     : 感情に働きかける

例えば、組織サーベイの結果、部下に対する上司の「傾聴行動」が部下のエンゲージメントを高めていたとしましょう。話を聞いてくれる上司のもとにいると、部下は働きがいを持てるという結果です。この場合、人事としては、上司に傾聴行動をとってもらうべく働きかける必要があります。

学術研究を参照すれば、傾聴行動を促すには、傾聴行動の自己効力感を高める必要があり、それには4つの情報源を提供すれば良いとの話でした。例示にすぎませんが、下記のような工夫をすれば、傾聴行動の自己効力感を高められるかもしれません。

遂行行動の達成:

  • まずは、関係が構築できている部下の話をしっかり聞いてみる
  • 管理職研修でお互いに傾聴を経験してみる など

代理的経験:

  • 傾聴行動のスコアが高い上司が部下と話をする様子を記録し、共有する
  • 傾聴が得意な人の普段の行動を観察する など

言語的説得:

  • 傾聴行動は慣れれば誰でもとれることを伝える
  • 傾聴行動を少しでもとった際には、それを承認する など

情動喚起:

  • 部下に傾聴をしている状況をイメージしてもらう
  • 傾聴するとポジティブな感情が生まれるよう、部下からも働きかけてもらう など

着実にサポートを積み重ねていく

以上、このコラムでは、組織サーベイを成果につなげるために一つの視点を提供しました。簡単に振り返ると、組織サーベイで見出された改善行動に対して「自己効力感」を高めるのが有効であること。そして、自己効力感を高めるには、「遂行行動の達成」「代理的経験」「言語的説得」「情動喚起」を行えば良いことを示しました。

会社から指示をすれば、従業員の行動が変容するわけではありません。組織サーベイの結果を踏まえた行動変容は、こうした地道なサポートを積み重ねることで着実に実現していくのです。

 

著者

伊達 洋駆
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、ピープルアナリティクスやエンゲージメントサーベイのサービスを提供している。著書に『オンライン採用』(日本能率協会マネジメントセンター)、『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(共著:ソシム)など。

 

 


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※1:Bandura, A. (1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84(2), 191-215.
※2:Maddux, J.E. (2001). Self-efficacy: The power of believing you can. In C.R. Snyder and S.J. Lopez (Eds.), Handbook of positive psychology. Oxford, England: Oxford University Press. pp. 277-287.
※3:Mosley, D., Boyar, S., Carson, C., and Pearson, A. (2008). A Production Self-efficacy Scale: An Exploratory Study. Journal of Managerial Issues, 20, 272-285.
※4:Houghton, J.D. and DiLiello, T.C. (2010), Leadership development: the key to unlocking individual creativity in organizations, Leadership & Organization Development Journal, 31, 230-245.